こどものころのこと
めがさめるといつもわらいだしたいような、今日も一日探検するぞという気分。世界のすべてをみたいような
お父さんと、お母さんが大好き。お父さんは何でも知っていて、私の質問にすぐに答えてくれる。お母さんは「お父さんにはわからないことはないって信じてるのよね」と笑いながらいう。
おねえちゃんはいつもちょっとあきれたふうでわたしにかまってくれる。
たいていおいかけまわして、まねをしているのはわたしのほうだけど、時々妹をかまいたくなるのか髪の毛を結わせてほしいとおいかけられることがあった。
こたつのまわりをぐるぐるおいかけっこ。
ちびくろサンボの物語みたいにバターになってしまう、幸せな子供のころの記憶。
お父さんは休みのたびにいろいろなところに連れて行ってくれた。
博物館、美術館、山や川、海、遊園地
自分のみているものをみせたいと、小さな私のよこにしゃがみ、わたしのあたまをしっかりもって「よく見ろ」と、美しい星座や、珍しい鳥。自分の見える美しい世界をわたしにしっかり教えるように。
わたしは目をしっかりと開き世界をみつめる。世界は、たいていの大人たちはそんなわたしにいつもほほえんでくれた。
いつからだろう。わたしは世界を直視することをやめてしまった。
今はもう、自分の中の美しい記憶がこれ以上すり減らないようにするのにせいいっぱい。